見出しと真実の間:学歴と脳卒中の関係

日本の高学歴女性、高い脳卒中リスク(朝日新聞)
脳卒中の発症率、高卒女性は少なく…厚労省が2万人調査
Education, Social Roles, and the Risk of Cardiovascular Disease Among Middle-Aged Japanese Women. The JPHC Study Cohort I

中学卒や大学卒の女性は、高校卒の女性に比べて、くも膜下出血脳梗塞(こうそく)など脳卒中を発症するリスクが高いことが、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の調査で分かった。(上記記事より引用)

やっぱり、結果を世間一般に伝える時には注意が必要だなあと改めて思った。因果関係があるのかと思われがちな見出しになっているように思う。「あら、じゃ、うちの子は高校まで行かせて終わりにしましょ」だとか「自分は中卒だから脳卒中のリスクを抱えている」なんていう受け止められ方をするとしたら、大変です。

12年追跡した研究ではあるけれど、高卒→脳卒中が少なくなる、という因果関係は証明していない。なぜなら、これは、因果関係を証明する為のいわゆる「実験」ではない。つまり、被験者はそれぞれの学歴にランダムに振り分けられたのではないため、中卒、高卒、大卒の3グループが、学歴以外の点で同等のグループであったかどうかは分からないから。実験的に学歴をランダムに振り分ける、というのは、無理な話なので、この研究が「実験」でないことは、致し方ないことではあります。性別とか人種をランダムに振り分けるのが無理なのと同じように。(たとえば、「じゃ、この実験のためにあなたには男性になってもらいます」というのは無理ですから。)

記事を最後まで読むと、学歴の違い→健康状態やら精神的ストレスやらが異なる(媒介変数)→脳卒中のリスクが異なるのではないかという可能性を指摘している研究であることが分かります。なので、学歴、というステータスが、たまたま、脳卒中のリスクに影響を与える真の要因を、代理的に捉えた変数であったということだろうな。

というわけで、「学歴」という仮の変数間の違いを示すことによって、脳卒中のリスクを解明する方向性を与えてくれた研究ではあると思うので、今後の研究に期待といったところでしょうか。